獣医師とは?

私達は、獣医師のことを充分知っているのでしょうか?


・・いきなり、獣医師先生方が気分を害するような書き出しです。(苦笑)
別にそういうつもりはありませんが、私たち飼い主は、獣医師のことをあまり知らないのでは?・・と思うのです。
少なくとも私は、乙音のことがある前は良く知らなかったし、詳しく知ろうとも思いませんでした。

詳しく知らなくても、何も無ければ全く構わないことですが、世の中、「知っていて損はない」とは良く言ったものです。
我が子に対する飼い主の責任として、「病院選び、獣医師選び」は、我が子の命を左右する、とても重要なことです。
ものごとを選択するには、やはり予備知識はあった方が良いと思います。

獣医師という職業に就くまでの道のり、大学で学ぶこと、臨床獣医師(病院で患者を診る獣医師)の実際・・これらについて。



1)獣医師になるには?

ご存知の通り、大学の獣医学科(名称は大学により異なる)を卒業し、国家試験に合格しなければ名乗れない職業です。
動物診療の世界で唯一、国に認められた資格です。
国内には、獣医師国家試験受験資格を得られる学科のある大学は、国公立合わせて16校しかありません。
全ての学生を集めても、1学年1,000人に満たない「狭き門」です。
そして、医師や歯科医師、薬剤師(18年度より)と同じく、大学は6年制です。
偏差値はもちろんのこと、獣医師の試験を受けるまでには、高い費用が必要とされる職業です。

獣医師国家試験は年1回、合格率は毎年85%程度のようです。
国内で獣医師登録をしている獣医師は、2万人弱のようです。(犬猫などの伴侶動物を診る臨床獣医師は半数以下?)


2)獣医師の待遇

これは、思っていたよりも随分悪いようです。
動物病院を開業して経営者となっても、ほとんどの獣医師は同年代のサラリーマン以下・・という話もあります。
(もちろん、すごく儲かっている方もいるようですが・・)
その上、休みは少なく、時間外の急患にも対応しなければなりません。
しかも、定期的に患者が来る保証はなく、軌道に乗らないと収入は不安定な職業です。
若い勤務獣医師などは、時給換算すれば、学生のバイト並み・・という話もあります。

同じ医療に従事する医師・歯科医師・薬剤師と比べ、明らかに待遇は悪いようです。
これは、人間と同じような保険医療制度が動物診療にないのが原因のようです。

当然、獣医過程を経て臨床獣医師に就く学生さんは少なく、公務員になったり企業に就職する方が年々増えているとか。
そして、勤務獣医師では食べていけないので、開業する方が増え、地域によっては動物病院の乱立・・という構図が出来上がっているようです。


3)大学で学ぶこと

日本では、獣医師は「産業動物」「家畜」を扱う職業として始まっている歴史があります。
つまり、「人間の役に立つ=人間のためなら動物を犠牲にする」・・という考えが根底にあるようです。
(私も肉は食べますし、数え切れない動物の犠牲によって確立された医療も受け、薬も飲むので、同罪ですが・・)

そして、国(農林水産省)の考えも、伴侶動物重視にはなっていないようです。
したがって、どうしても、伴侶動物ではなく、産業動物・家畜に対する教育(命を助けるではなく、命の利用)に重きが置かれているようです。

私たち伴侶動物の飼い主が勘違いしてしまうのは、「獣医師は、動物の命を救う職業」・・という認識です。
もちろん、そういう役目もありますが、動物の命を「人間のために使う」・・という教育がされているもの事実のようです・・
思ったより、大学では「伴侶動物の命を救う教育」がされていないのが実情のようです。。


4)動物病院で経験を積む

街の動物病院の獣医師は、伴侶動物を助けることを命としている方々です。
子供の頃、飼い犬・飼い猫を助けてあげられなかったことから獣医師を目指した方も少なくないでしょう。
大学での辛い動物実習を耐え、晴れて「動物の命を救う」ことができる立場になったんだと思います。

ですが・・
大学では「命を助ける」ことに充分な教育がされていない実情から、「命を救う」知識・技術を得るのは、大学を卒業してからです。
動物病院に勤務し、日々経験を積んで、動物の命を救えるようになっていくのでしょう。
とても大変なことだと思います。

大学教育がそんな実情であるために、伴侶動物の治療法は、人間のそれとは比べ物にならないほど遅れているようです。
今でこそ、伴侶動物の位置付けは高くなってきていますが、何しろ研究(臨床)が足りないために、動物の病気・その治療法は
「分からないことが多い」・・のです。
そして、医師と違い、獣医師は「全ての種類の犬・猫の、全ての病気・怪我に対応しなければならない」という問題があります。
私たちが、医師と同じ感覚で獣医師を捉えていると、痛い目に遭うこともあるのです。

つまり、獣医師は、医師に比べ「分からない、手に負えない」・・というケースが多くなってしまうのですね。

獣医師という職業の背景を考えると、分からないからと言って、一獣医師を責めるわけにはいきません。
仕方の無いケースもあると思います。
問題は、「分からない・手に負えない」という場合、「どうするか?」・・ですが。


「絶対にこの子を助ける!」・・という強い意志を持って、社会に出てからどれだけ勉強し、経験を積み、最新の病気の治療法を探してきたか、
それによって、獣医師には大きな「差」が出るのだと思います。







飼い主からみた、「良い獣医師の条件」   (注:私個人の意見です)


当然ですが、「我が子を救ってくれる」獣医師です。
でも、先にも書いたように、分からないことが多いというケースがあります。
得手・不得手もあります。

  ・今まで問題なく診て頂いていて、不安も不満もない
  ・きちんと説明をしてくれる
  ・優しい、良心的         ・・など、これらも重要な条件です。

何も問題がなく、不安も不満もないのなら、「今は」良い獣医師に掛かっていると言えるでしょう。

でも・・
私もそうでした。
不安も不満もなく、獣医師を信頼し、獣医師のことばを信じていました・・


私が今思う、「良い獣医師の条件」は2つです。

  1)飼い主のどんな疑問にも誠意を持って答えてくれる
  2)「手に負えない」と分かったら、すぐに手を離し、治せる獣医師への橋渡しができる


・・これだけです。

最終的に、我が子の治療方針を決めるのは「飼い主」です。
いろいろな事情や、我が子の苦しみを最小限にするために、「治療をしない」・・という選択が必要な場合もあります。
このとき、飼い主が最良の選択をするためには、飼い主と獣医師との「腹をわった話し合い」が必要です。
また、「どんなことをしても助ける!」・・という選択をするにも、飼い主と獣医師との話し合いが必要になります。
飼い主は、獣医師から、多くのことを教えて頂かなければなりません。
そのためには、1)は不可欠です。

動物の病気には、「分からないことが多い」ため、「様子を見る」・・という言葉が多用されがちです。
どんな病気か確定していて、治療法も分かっていて、その上での様子見ならば問題ないと思います。
ですが、多くの場合、

  「分からないけど、とりあえず推測される病気に効く治療をしたので」
  「    〃    今の症状を改善する治療をしたので」

・・・ということではないかと思います。
きちんと検査をし、検査結果から「これならこの病気に間違いない」・・という確立された場合でなければ、
「分からない」と同じようなものです。

そして、上の2つのどちらにも続く言葉は、「これでダメなら別の治療をします」・・です。
「大丈夫です」・・ではありません。

「様子を見ましょう」という言葉は、緊急性が感じられず、「大したことない」と思ってしまいがちな言葉です。
ですが、病気とその治療法が確立されていない場合は、飼い主はとても「慎重にならなければならない」のだと思います。
様子見の期間が長かったり、症状が改善されなかったり、別の症状が出てきたり、頻繁に薬を変えるようであれば、
「分からない、手に負えない・・」という気持ちが、もしかしたら獣医師にあるかもしれないからです。

本当に我が子を救ってあげたいと思ってくれる獣医師ならば・・
「自分で病気を突き止め、治せるかどうかを見極め」て、「手遅れにならないうちに治せる獣医師を紹介する」・・はずなのです。

よほどの病気や怪我でなければ必要ないことですが、よほどの場合、2)の条件はとても重要だと思います。





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