血液検査から見えること

動物病院に連れて行ったときに、最初に受ける検査は血液検査のことがほとんどです。
血液検査によって、どこが悪いのか当りをつけるので、初期診断としてとても重要な検査です。
最初の血液検査の結果を「読み間違う」ことや、検査項目の選択の誤り、検査数値の誤差・・などの要因から、
「せっかく異変を早期に発見したのに、適切な治療が出来なかった」・・という例は、かなりあると思います。

飼い主としても、血液検査について、ある程度知っておくことはとても大切だと思います。
                                                                
      血液検査の基礎知識 
      血液検査値の誤差要因 
      血液検査における臓器別パネル ※臓器疾患ごとの検査項目リスト) 

      血液検査項目1 TP 
      血液検査項目2 Ca 
      血液検査項目3 P 
      血液検査項目4 Na 
      血液検査項目5 Cl 
      血液検査項目6 K 

      肝疾患が疑われる場合の血液検査について 

血液検査については、主に動物看護士向けの専門書⇒   を参考にしています。





血液検査の基礎知識

血液検査は、大きく下記の2種類に分かれます。

  @完全血球計数(計算):CBC(一般検査)
  A生化学検査

@は、血液成分(赤血球・白血球・血小板など)の数や量を測る検査で、血液の状態を診るための検査です。

  ・赤血球の数や血液の濃さによって、「貧血」「脱水」が分かる。
  ・白血球の数によって、感染症、炎症、中毒・・などの疑いがあるかどうかが分かる。
  ・血小板の数によって、血液の固まり具合を診ることができる。 

・・・などが分かります。

Aは、血液に含まれる物質の有無や量を調べることで、主に臓器の状態を診るための検査です。


@Aの検査はそれぞれ別の検査器で行います。

@の完全血球計数は、「血球計数器」 で測定します。
Aの生化学検査は、 生化学分析装置 で測定します。  

各検査結果は、どのメーカーの検査器でも同じではなく、数値に多少の差(幅)がありますので、検査数値の判定は、
「その検査器固有の判定値で見ることが必要」のようです。
また、検査器によっては、検査する前に精度合わせ(キャリブレーション)が必要で、これらが手順通りに行われていないと、
「正確な値が得られないことがある」ようです。

獣医師の診断の指針となるように、検査結果に「疑わしい病気」がリストアップされる検査機器もあるようで、比較的経験の浅い獣医師でも
的確な診断が出来るように(?)、動物用の検査装置も機能アップされているとか。
まあ、機械のことなので、それを信じ過ぎてもらっても困ると思うのですが・・

生化学検査の項目は、14〜16項目程度の比色項目と、3〜5項目程度の電解質項目があり(※検査機器により異なる)、
全ての項目を検査すると検査費用が高くなってしまうため、「どの項目を検査するか?」は、以下の二通りのどちらかで行うようです。

 1)初回は全項目を測り、異常値を示した項目のみを継続して検査していく
 2)特定の臓器に異常がある場合に検査すべき項目のみを検査する
   ※「臓器別パネル」という、臓器ごとの検査項目リストがあるようです。




血液検査値の誤差要因

血液検査の数値には、誤差があることがあります。
先に書いたように、検査機器によっても異なります。

他の誤差要因は、下記のようなものです。

  ・抗凝固剤の不適切使用、取り扱いのミス(混合割合、攪拌不足など)
  ・食後すぐの採血⇒(血糖値は高目を示す)
  ・かなり空腹時の採血⇒(血糖値は低目を示す)
  ・代謝が安定していない場合(糖尿病、急性膵炎などの病気の時など)
  ・血液に過度の圧力をかけたり、振り過ぎたことによる溶血(赤血球の破壊)
  ・採血後、長時間放置したり、高温下で放置した場合

特に、「抗凝固剤の不適切使用、取り扱いのミス」というのは、検査する病院側が気付いていないため、「検査数値の誤りにも気がつかない」
ということが有り得ます。

血液検査の数値ばかりで判断せず、状態を良く診ることが大切でしょう。
たとえ、血液検査で「問題ない」という結果だったとしても、「やはりおかしい・・」というような場合、獣医師も「分からない」という場合
(飼い主に対して分からないとは言わない獣医師もいるので、要注意)、検査していない血液検査項目を調べる必要があるかもしれません。

そのような場合に備え、「血液検査をしたら、検査項目と数値を教えてもらう」・・ということは、飼い主として知っておくべきことだと思います。





血液検査における臓器別パネル (※臓器疾患ごとの検査項目リスト)


臓器別に、血液検査の生化学検査項目リストに従って診断することを「パネル別評価法」というらしいです。
以下、「一次パネル、二次パネル」と分けてありますが、まず一次パネルの項目を検査します。(スクリーニング:選別)
ここで異常値があった場合、二次パネル項目の検査をするようです。

病院で血液検査をして、どの項目を測ったのかを把握できていれば、下記に照らし合わせてみると、
獣医師がどの臓器・病気に疑いを持っているかが、およそ分かると思います。

 腎疾患パネル
 一次  BUN(血中尿素窒素)、Cre(血清クレアチン)、尿比重(USG)
 二次  P(血清無機リン)、Ca(血清カルシウム)、K(血清カリウム)、Cl(血清クロール)
 肝疾患パネル
 一次  ALT(GPT:アラニンアミノトランスファラーゼ)、
 AST(GOT:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
 ALP(アルカリフォスファターゼ)、ALb(アルブミン)、TP(血漿総タンパク)
 二次  BUN、Cre、T-Bil(総ビリルビン)、T-cho(総コレステロール)、尿中Bil
 膵外分泌疾患パネル  一次  Amy(アミラーゼ)、Lip(リパーゼ)、BUN、Cre、USG、Ca、ALb
 二次  Glu(グルコース:血糖値)、ALT、ALP、T-cho、TG(トリグリセリド)
 消化器疾患パネル
 一次  TP、ALb、Na、K、Cl
 上皮小体(副甲状腺)            疾患パネル
 一次  Ca、ALb、P、ALP
 二次  BUN、Cre、UN(尿素窒素)/Cre、尿検査
 甲状腺パネル  一次  T-cho 
 副腎パネル
 一次  ALP、Na、K、BUN、Cre-Na、USG、Glu
 膵内分泌疾患パネル  一次  Glu、尿検査
 ニ次  ALT、ALP、Amy、BUN、Cre、TG





血液検査項目1 TP


血液中には、3種類のタンパク質(アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン)が含まれています。
このうち、アルブミンが半分以上の割合を占めるようです。
3つのタンパクにはそれぞれ特徴があります。

  アルブミン:肝臓で作られる。(卵白のように)加熱で固まる。
  グロブリン:特定のタンパクと結合する=抗体となる。免疫の役目をする。
         数種に分類される。
  フィブリノーゲン:線維状タンパク質。
            傷が出来たときに、血小板と結びついて血液を固める。

TPは、これら全ての総量なのですが、それぞれのタンパクの増減まで調べることで、何がTP異常の原因なのか、およその推測ができる場合があるようです。
※TPのみでは確定できません。

  アルブミン量の異常 ⇒ 肝臓疾患の疑い
  グロブリン  〃    ⇒ 免疫疾患の疑い
  フィブリノーゲン 〃 ⇒ 炎症・腫瘍などの疑い

もちろん、増えるか減るか、また組み合わせによっても違うようなので、実際はこんなに単純なものではないようですが・・

TP値は、病気によって上昇あるいは下降します。
ただし、血液(血漿)中のタンパク量は、食餌によって多少の上下はあるようです。
タンパクは、投薬や点滴などでは補えないものであり、不足している場合には、ささみや卵白などの高タンパクの食品、あるいは処方食で補うことになります。
タンパクを補うという面で考えた場合、タンパクが豊富な食品ならば何でも良いかと思いがちですが、乳製品などタンパクが豊富な食品は脂肪分も多いので、脂肪分の摂り過ぎを防ぐため、低脂肪の食品を与えることが大切です。


◎TPが高い場合の状態と病気

 ・脱水症状
 ・炎症
 ・腫瘍
 
◎TPが低い  〃

 ・蛋白質の喪失⇒肝臓・消化器からの喪失)、出血、やけど、腫瘍、手術後、筋肉壊死
 ・蛋白質生産低下⇒重い肝疾患、食欲不振により飢餓状態
 ・免疫疾患⇒グロブリンの産生低下


TPは、3つのタンパク(アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン)の総量のこと・・というのは先日の記事にも書いた通りです。
それぞれのタンパクの増減を見ることで、より詳しく原因を探っていくことができるようです。
アルブミンとグロブリンの比(A/G)、そして、傷が出来たときに血小板と結びついて血液を固める役割をするフィブリノーゲン、これらがどうなっているかを調べるようです。

「TPが異常に高い、低い」・・という場合には、
「アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン」それぞれはどうか?・・ということまで調べてもらった方がいいかもですね。
飼い主から言わないと、そこまでは調べないかもしれない・・と思います。
現に乙音の場合は、調べてくれませんでした。。

それぞれの増減を調べることで、炎症なのか、腫瘍なのか、免疫疾患なのか、肝疾患なのか・・e.t.c. の目処が付けられるかもしれないです。


TPが低い場合、概ね、「腹水」「胸水」「四肢の浮腫(むくみ)」がみられることが多いようです。
血液中のタンパク質の減少により、血管から水分が漏れ出すことによるものです。
何故、タンパク質が少なくなると、漏れ出すのか?・・・というのは、浸透圧が関係しているようです。  ⇒参考




血液検査項目2 Ca


TPそしてCaの低下は、腹水や痙攣などの(見た目)重大な症状を示すものになります。
TPとCaは、数値が連動することがあります。


◎カルシウム増減時の主な症状

  増加⇒多飲多尿、多尿、衰弱、食欲不振、嘔吐、便秘
  減少⇒痙攣、強直(硬直)、不安症状

他、骨疾患や心電図異常を示すこともあるようです。


◎カルシウムが上昇する病気・症状

  ・リンパ肉腫(犬) (※猫は稀)
  ・リンパ性白血病
  ・多発性骨髄腫
  ・骨髄増殖性疾患
  ・肛門アポクリン線癌
  ・肛門嚢癌 (※高齢の雌犬に多い)
  ・腫瘍の骨への転移

◎カルシウムが減少する病気・症状・中毒

  ・低アルブミン血症
  ・低カルシウム血症
  ・腎疾患
  ・栄養性二次性上皮小体機能亢進症
  ・吸収不良
  ・急性膵炎
  ・産褥テタニー(産直後のカルシウム不足)
  ・エチレングリコール中毒(不凍液など)


カルシウムは、タンパク質のアルブミンと密接な関係があり、アルブミンがカルシウムの貯蔵運搬に重要な役割をしているそうです。
なので、「低アルブミン血症ならば、低カルシウム血症になる」ことがあるため、これら両方を測定しておく必要があるようです。


カルシウムは、骨の成分であることはご存知の通りですが、他にも重要な役割があり、
「神経・筋伝達」「筋収縮」「細胞膜安定化」「血液凝固」・・に関わってきます。
痙攣発作の引き金になることがあります。
痙攣は、てんかんのように脳神経系の原因もあります。
カルシウムは、神経伝達に重要だからですね。

原因疾患の治療はもちろんですが、早急にカルシウムを増やすために、点滴や静脈注射をすることが必要になる場合があります。
心臓に影響を与えることがあるため、心電図を見ながら、心拍数を計りながら、様子を伺いながら・・といった注意が必要になります。


乙音が頻繁に痙攣を起こすようになったとき、私たちは自宅でCaを静脈注射していました。
心臓のことを考えて、とてもドキドキしながらでした。。
Ca低下によって、痙攣発作を起こすことはままあるようなので、個人的には要注意項目だと思っています。

我が子の痙攣する姿を見るのは、本当に辛いです。
痙攣中には何も手出しはできません。(してはいけません)
是非、注意してあげて欲しいです。




血液検査項目3 P(リン)


通常の検査項目を選択した(限定した)血液検査では、あまり測ることの無い項目かもしれません。


  正常値  犬:2.2〜6.5程度、猫:4.5〜8.1程度

※正常値範囲は、検査機器や動物の種類によって異なるようです。


《数値が高い場合》
  ・腎疾患
  ・甲状腺機能亢進症(猫)
  ・原発性または二次性上皮機能亢進症
  ・上皮小体機能低下症
  ・ビタミンD過剰症・・など

《数値が低い場合》
  ・高カルシウム血症(悪性腫瘍などによる)
  ・栄養不良
  ・骨軟化症
  ・高血糖状態、
  ・糖尿病治療中(糖尿病ケトアシドーシス)・・など

 
1)血清無機リンの値が高い場合、腎不全の場合が多いようですが、腎不全になった原因疾患が存在するケースがあります。
例えば、「原発性または二次性上皮機能亢進症」。

 上皮小体ホルモンの多量分泌⇒高カルシウム血症⇒カルシウムの尿管沈着⇒腎不全

結果、血清無機リンは高い値を示すようです。
(この病気の場合、リンの他、クレアチンと尿素窒素の数値も上がるようです。)


2)また、腎機能が正常であっても高い場合があります。
(猫に限り)甲状腺機能亢進症、上皮小体機能低下症です。
上皮小体機能低下症の場合は、同時に低カルシウム血症を起こすため、痙攣発作をすることがあります。

3)ビタミンD過剰症の場合は、カルシウムとリンが上昇します。


このように血清無機リンは、腎機能やカルシウム、ビタミンDとの関係を見ることで、
リンの数値異常の原因が何かを絞っていくことが出来そうです。
原因不明の溶血・痙攣発作・血清アルカリ・フォスファターゼ(ALP)の上昇がある場合
「血清無機リン濃度を測るべき」・・と、参考にしているに書かれています。




血液検査項目4 Na


  正常値  犬:141〜152程度、猫:147〜156程度


《数値が高い場合》
  ・高Na血症、脱水、浸透性利尿(高血糖症)、尿崩症など

《数値が低い場合》
  ・下痢、嘔吐、うっ血性心不全、慢性腎機能障害、副腎皮質機能低下症、尿路破裂など


ナトリウムの測定が必要となる状態・疾患は下記の通りです。
これらが予測される場合、Naを測定する必要があるようです。

  ・全身性疾患(多臓器にわたる疾患など)
  ・高カリウム血症、低カリウム血症
  ・副腎不全
  ・心不全
  ・腎不全


これらの疾患の症状が見られないのに数値が振れる場合、測定時の誤差や服用している薬の影響も、可能性として考えられるようです。


このように「よく分からないけれど数値がおかしい」場合、薬を服用していなかったか、検査は正しく行われたか、確認してみる必要もありそうです。
もし誤差や検査の不備を考えず、「どこかが悪いはず」という考えだけでいれば、獣医師によっては「いろいろ試される」ようなことも在り得る・・気がします。
結果、「グチャグチャにされてしまう」・・ということも、実際あると思います。


血清ナトリウム値が低い理由として、「血が薄まっている」「ナトリウムが失われている」。
薄まる場合は、何らかの原因で水分を余計に溜めてしまっていることが多いようです。
これは疾患に限らず、不適切な点滴(ブドウ糖輸液)でも起こりうることのようですが。

高い場合はこの逆です。

内臓や血管からの水分滲出もあるようなので、見た目水分の排泄に異常がなく、Na値に異常がある場合は、内臓や血管・ホルモンなどに異常があるのかもしれません。
また、医原性(治療によるもの)の場合もあり、ミネラルコルチコイド療法(酢酸フルドロコーチゾン:フロリネフなどの服用)、Naを含んだ薬の服用、利尿剤の投与などでNa値が振れることがあるようなので、値を正しく判断するためには、これらのことも考慮しなければならないようです。


・・・と、難しいことを書いても分かり難いですが(汗)、概ね、「Na値が低い場合は要注意
と思っておいた方が良いのかもしれません。
心不全や腎不全などの重篤な疾患の可能性があるからです。




血液検査項目5 Cl(クロール)


   正常値 犬:105〜115(mEq/L)程度 猫:117〜123 程度

クロールって、他の電解質に比べて聞き慣れないですね。
NaCl(塩)の「Cl」です。
塩分の形で摂取されるようですので、Naとの関わりが大きいようです。
役割としては、主に「体内の水分保持」「浸透圧の調節」。
胃酸にも含まれているようです。


《数値が低い場合》
   ・(胃による)嘔吐
   ・副腎皮質機能低下症(アジソン病)

《数値が高い場合》
   ・Clの入った薬の服用中
   ・利尿剤の投与中
   ・硫黄による中毒
   ・脱水
   ・Na値が高い場合と同じ疾患(浸透性利尿、尿崩症、腎疾患など)

測定誤差要因としては、「偽性低クロール血症」「脂血症」「高タンパク血症」。


胃酸に含まれていることから、胃の不調による嘔吐で失われ、この場合は、ナトリウム値よりも(比率として)低い値を示すようです。
Naとの関係が深いため、NaとClは同時に測定することが望ましいようで、またK(カリウム)によっても変動することがあるようです。


参考にしている本では、他の項目に比べ、記述はかなり少なかったです。
いまいち、すっきりしない検査項目でした・・
この項目のみで判断するようなことはあまりないのかもしれません。
素人の飼い主としてチェックするのは、「NaやKを測ったときにClも測定しているか?」とかでしょうか。
もしClを測ることがあった場合、獣医師に「Clで何が分かるの?」と聞いてみるのもいいかもしれません。




血液検査項目6 K(カリウム)



   正常値 犬:4.4〜5.4 mEq/l 程度  猫:4.0〜4.5 程度


カリウムを測定しなければならない場合は以下の通りです。

   ・嘔吐
   ・下痢
   ・衰弱(犬:後脚の運動失調、猫:頭を持ち上げられない状態)
   ・原因不明の不整脈
   ・排尿異常(乏尿・無尿・多尿)
   ・原因不明の巨大食道症
   ・激しい脱水状態


カリウムの数値観察が必要な疾患は以下の通りです。

   ・副腎皮質機能低下症(アジソン病)
   ・腎不全
   ・糖尿病性ケトアシドーシス


また、以下の治療中にも観察が必要のようです。

   ・輸液療法(点滴:生理食塩水)
   ・利尿治療
   ・カリウム投薬中
   ・インスリン治療中



【測定誤差要因】

カリウムの測定誤差要因は、@血液の状態による A薬物療法による ・・があるようです。

 @血液の状態による誤差
   1)低い値を示す場合
     ・高脂血症
     ・高タンパク血症
     ・BUN(血液尿素窒素)115mg/dl以上の時

   2)高い値を示す場合
     ・血小板数が異常に高い場合
     ・WBC数(白血球数)が20,000以上の場合


 A薬物療法による場合

   1)低い値を示す場合
      利尿剤、下剤、カリウムEDTA、カルバニシリン、ペニシリン(大量投与)
      インスリン、重炭酸ナトリウム、アスピリン、ブドウ糖の静脈注射時
      期限切れのテトラサイクリン投与時、副腎皮質ホルモン(ステロイド)
      アンフォテリシンB、アミノグリコシド・・など

   2)高い値を示す場合
      ヘパリン溶液(クロルブトールを含む)、サクシニルコリンの反復投与
      ジギタリスの過剰大量投与、カプトプリル、アルドステロン拮抗型利尿剤
      マンニトール注入の高浸透圧、プロプラノトール・・など



カリウムの検査で注意することは、「高脂血症の有無」「高タンパク血症の有無」があるかどうかや、上記の薬品を投与していないかどうかです。
また、高カリウム血症の場合、
      @医原性(薬の過剰投与)
      A急性原発性乏尿性腎不全
      B副腎皮質機能低下症   ・・・が大きな原因と考えられるようです。




肝疾患が疑われる場合の血液検査について


肝疾患が疑われる場合、まず下記〔一次〕の5項目の血液検査が必要のようです。
(肝疾患であるかどうかを、より正確に判定していくための血液検査項目は、〔二次〕項目になるようです。)

【肝疾患パネル】
 〔一次〕 ALT(GPT:アラニンアミノトランスファラーゼ)、
       AST(GOT:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
       ALP(アルカリフォスファターゼ)、ALb(アルブミン)、TP(血漿総タンパク)
 〔二次〕 BUN、Cre、T-Bil(総ビリルビン)、T-cho(総コレステロール)、尿中Bil



ASTは肝臓以外の臓器にも存在するため、この数値の異常だけでは肝疾患とは判定できないようです。
ALT、AST、ALPの3項目は、「肝機能に異常がある場合に正常値より高い」のですが、「正常値より低い場合でも肝疾患の場合がある」・・そうです。

それは、

・肝硬変や肝性脳症のように、肝細胞が減少している場合
・門脈シャントのように、血管異常がある場合

※ご存知の通り、血液検査の正常範囲に対して、検査値が「低いか高いか」で疑われる病気が決まっており、それに従って判断するのが普通だと思いますが、このようなイレギュラーな場合もあるのですね。



肝機能検査には、「内因性と外因性」の機能検査 があります。
下記の項目の数値を計測することで、「内因(肝臓自体に障害があるか)性の検査を行います。


【内因性機能検査】

目的:肝臓が生産する物質および処理する物質(下記)の量を調べ、肝機能が正常であるかどうかを判断する。

   BUN(血液尿素窒素)、アルブミン、グルコース(血糖)、
   T-cho(総コレステロール)、T-Bil(総ビリルビン)
   アンモニア(NH3)、総胆汁酸(TBA)


胆汁酸
肝臓で作られ、胆汁中に排泄される。回腸(※小腸の一部)で再吸収されたのち肝臓に戻り、肝細胞によって除去される。(腸肝循環という)
肝臓が少しでも侵された場合、胆汁酸は血液中に漏れるため、肝機能チェックの指標となる。
ビリルビンよりも敏感な検査で、また黄疸よりも先に増加する。

アンモニア
主に腸内細菌によるアミノ酸の異化により生じ、肝臓で除去されたのち尿素となり、腎臓によって排泄される。
肝障害がある場合、尿素は減少する。
アンモニアは、肝臓に障害があると解毒できないため、中毒による神経症状が出る。(肝性脳症)


血液検査以外で肝機能をチェックする検査には、色素(試薬投与)検査があります。

   色素(ブロムスルホフタレイン、インドシアニングリーンなど)を静脈に投与する。
    ・肝機能が正常であれば、投与した色素は除外される。
    ・異常があれば色素が検出される。 

結果の判断が難しいこともある血液検査のみで肝機能の状態を判断するより、このような試薬検査を行った方が、肝機能を確実にチェックできるように思います。
ただ、たとえ正常であっても、試薬によって少なからず肝臓には負担がかかるので、安易には行えないのかな・・・と感じました。



「血液検査(一次)はOK」⇒問題なし⇒確定診断が遅れる・・・ということがないように、「血液検査は問題ないと言われたけれど、やっぱりおかしい・・」
・・・と感じる場合、肝疾患の症状が見られる場合は、「二次の血液検査項目を調べて頂く」・・ということが必要だと思います。
※肝疾患に限らず

血液検査だけを過信せず、「状態優先で診断して頂く」ことは、手遅れにしないために絶対に必要だと、経験から思います。






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